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 前号でお知らせした通り、待ちに待った「儲ける技術講習会」の先行編が開催されました。
 未生流京都支部の副会長でもある蔭山雅甫先生をお迎えしたのは予想を上回る28名の受講生。深萱さんを始めとするスタッフみなさんの気配りで、既にテーブルの上には7本の松、7把の水引、また木、竹筒のすべての花材が用意されていました。
 未生流では古典花を格花と呼び、天円地方の合体した直角二等辺三角形に天・地・人の三つの枝を配して自然と人間の調和した、秩序をもった草木のあるべき姿によって和の美を表わします。立った三角形に枝を配する縦姿と、横の三角形に構成する横姿があり、またその組合せで均衡のおもしろさや、特定の景観、景趣を形作ります。
 基準になる花形は、三才格で、天・地・人の三才の格法で構成され、天は体(たい)、人は用(よう)、地は留(とめ)の名で呼ばれます。三才格に相生(あおい)、控(ひかえ)を加えれば五行格に発展します。
 今回は千歳の寿を現す松を用いた新年のお祝いのはなです。特にこの若松を使った七五三 注連の伝(しちごさん しめのでん)は、7本の若松の枝で七、五胎を現す腹籠りの枝(新芽(=
次の命)が松葉(=お腹)の中で生まれている)の五、体、用、留の枝とそれぞれの添え枝を加え陰陽三箇所の三で「七五三」とします。体・用・留の枝は「天・人・地」の三才を表していますが、天は万物を動かす才、地は万物を生成する才、天と地の恵を受けて成長する人は考える才を持つと考えられています。
 まずは松やに防止にたっぷりのハンドクリームを塗りこみ、竹筒の正面を決めるところから始めます。一巡している節の一番低いところを正面とし、水につけて柔らかくしたまた木を約60度に開いて筒の中に固定します。
 準備が整えば、ようやく枝の見立てに入ります。寸渡(竹筒)の3倍弱の高さに体の枝を、体の3分の2くらいに用の枝を、その用の枝の半分弱くらいの高さに留の枝をそれぞれ整え、はさみの背中を使って足もとの葉つきの部分をきれいに落としてためていきます。
 いけ方の順番は、用→用添→体の前添(新芽が5本そろったきれいなものを選ぶ)→体→体の後添→留→最後に留添を入れます。

 …と、テキストを読み進めるのは簡単で、先生は当然のこととしてスラスラいけていかれますが、現実は簡単ではありません。また木を60度に開く、その段階でほとんどの受講生がお手上げとなってしまいました。
 あらためて伺うと、思ったより力が必要で、心持ち狭い目に開けばきれいに生けられることがわかりました。一見、なんでもない道具に見えますが、また木がきれいに収まれば、お花の仕上がりの半分以上が決まるそうです。美しいための姿も、花器より上の部分のみに力を加えがちですが、見た目に美しい姿にするには、目に見えない下の部分に逆方向のためを加える必要があるのです。
 美しく、ひともとから流れるような曲線美を生み出すためには枝の切り方も大切なポイントで、生けたときに筒の内側に沿うよう、平行に切り落とします。花材が少ないうえに、決まりごとの多い格式美を表現するには、いかに見えない部分を大切にする必要があるかを知らされました。
 当初はてんやわんやで真っ直ぐにしか入れられなかった松も、先生の丁寧な指導をいただくと、それなりにたおやかな美しさを見せるようになり、教室内はどこかお正月気分に。
 ここからがクライマックス、最後の締めとしての水引の仕上げです。「相生結び」と呼ばれる左右対称の形に結びます。用の下に金、留の下に銀の水引がくるように結びます。この形は鮑結びとも云われており、左右の輪が互いに結びあっていることから、またのしあわびの鮑の形をしていることから、このような名称が
付いたとされています。京都では相生の意味をこめて用いられています。
 やはり最初の説明では?マークが飛び交い、指導される先生を取り囲む輪があちこちでみかけられました。それでも、いくら難しくても途中であきらめたりせずにお隣同士で教えあい、室内は終始和気あいあいの雰囲気でした。
 和花より洋花、いけばなよりもアレンジに重きをおきがちな現在の花商にとって大変新鮮で、また難しい講習でもありましたが、お客さまの立場からすれば、花屋とは和洋を含めての花のプロにほかなりません。今後の講習会等を通じ、伝統の技を身に付け、オールマイテイな花屋に成長していきたいものです。